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AIに任せてよい業務・だめな業務の分け方|2つの軸で線を引く

「AIに任せられる業務の一覧」を探しても、自社に当てはまるものはなかなか見つかりません。同じ「議事録の作成」でも、社内共有だけの会社と、そのまま取引先に送る会社では答えが変わるからです。

分けるべきは業務の名前ではなく、その業務の確かめ方です。出てきたものが正しいかどうかを自社で判断できるなら任せられますし、判断できないなら、どれだけ簡単な作業でも任せられません。

この記事では、2つの軸で自社の業務に線を引く方法と、「条件付きで任せる」をどう条件付きにするかを書きます。

  • 「できるか」ではなく「確かめられるか」で分ける
  • 線を引く2つの軸
  • 4つの区分と、それぞれの扱い方
  • 実際の業務を当てはめる
  • 条件付きで任せるときの、条件の付け方
  • 任せてはいけない3つ
  • 同じ業務でも、会社によって答えが変わる
  • 線は固定しない
  • 社内で共有する形
  • よくある失敗
  • まとめ

「できるか」ではなく「確かめられるか」で分ける

AIは、たいていの作業を「それらしく」こなします。問題は、できないときも同じ調子で出してくることです。

だから、AIができるかどうかで線を引くと間違えます。 できているように見えるものが混ざるからです。線を引くべきは、こちら側の条件のほうです。

  • 出てきたものが間違っていたとき、気づけるか
  • 間違ったまま進んだとき、戻せるか

この2つがどちらも「はい」なら任せられます。どちらかが「いいえ」なら、条件を付けるか、任せないことになります。

線を引く2つの軸

AIに任せる業務を分ける2つの軸

1つめの軸:間違いに気づけるか

気づけるのは、次のどれかに当てはまる場合です。

  • 自分がその分野を分かっていて、読めば違和感が出る
  • 元になる資料があり、突き合わせれば分かる
  • 数字や事実に、確認できる出どころがある

逆に、知らない分野の調査や、確認する手段のない数字は、間違っていても気づけません。「たぶん合っている」は、気づけないと同じです。

2つめの軸:間違ったときに戻せるか

戻せるのは、人の確認を通ってから外に出るものです。下書きの段階、社内で回覧する段階、公開前のチェックがある段階。ここで止まるなら、やり直せば済みます。

戻せないのは、送信や公開で確定してしまうものです。取引先へのメール、公開済みのページ、提出した書類。取り消しても、相手が読んだという事実は消えません。

4つの区分と、それぞれの扱い方

2つの軸を組み合わせると、4つに分かれます。

区分 扱い
気づける・戻せる 任せる
気づける・戻せない 条件を付ける
気づけない・戻せる 条件を付ける
気づけない・戻せない 任せない

「任せる」に入ったものは、細かく管理しなくて構いません。 下書きの質が低ければ書き直すだけなので、損失は数分です。ここを慎重にやりすぎると、確認のほうが時間を食います。

「任せない」に入ったものは、議論せずに外します。 ここを頑張って任せようとすると、確認の仕組みを作る手間が、作業を減らした分を上回ります。

迷うのは真ん中の2つです。ここは次の節で扱います。

実際の業務を当てはめる

業務 区分
社内資料のたたき台 任せる
文章の表記ゆれ直し 任せる
長い資料の要約 任せる
議事録の整理 任せる
企画の案出し 任せる
取引先へのメール文 条件付き
公開する記事の下書き 条件付き
知らない分野の調査 条件付き
数字の集計・計算 条件付き
見積金額の決定 任せない
契約書の最終確認 任せない
採用の合否判断 任せない
事故・クレームの一次対応 任せない

「任せる」に入っているものの共通点は、読めば分かる・直せば済むことです。この5つだけでも、毎日使えば時間は目に見えて変わります。最初の1つをどう選ぶかは中小企業のAI導入は何から始めるかにまとめています。

「任せない」に入っているものの共通点は、判断そのものであることです。金額、採用、契約、対応方針。これらは根拠を説明できる人が決める必要があります。

条件付きで任せるときの、条件の付け方

条件付きで任せるときの3つの条件

真ん中の2区分は、条件を1つ足せば「任せる」側に移せます。足す条件は、どちらの軸が欠けているかで変わります。

気づけるが、戻せない場合 → 間に1工程はさむ

取引先へのメールのように、送れば確定するものです。やることは単純で、送信前に人が読む工程を1つ入れるだけです。下書きまでAIにやらせ、送信ボタンは人が押します。

このとき、チェックする人を決めておくことが大事です。「誰かが見ているはず」の状態だと、そのまま出ます。

気づけないが、戻せる場合 → 確かめる方法をセットで決める

知らない分野の調査や、数字の集計です。やることは、確かめる方法を先に決めておくことです。

  • 調査なら、出てきた内容の出どころを自分で開いて確認する
  • 数字なら、元データで1〜2件だけ突き合わせる
  • 専門分野なら、分かる人に1回見てもらう

確かめる手間のほうが大きいなら、その業務はやらないほうが早いです。条件を付けても割に合わないものは、素直に外します。

条件の書き方は、外注先に渡す指示書とほとんど同じです。どこまでが相手の裁量で、どこからが確認を要するかを先に書く。動画編集を外注するときの注意点で書いた指示書の作り方は、そのままAIへの条件づけにも使えます。

どちらも欠けている場合 → 任せない

条件を2つ重ねると、作業より確認のほうが重くなります。この場合は人がやります。

任せてはいけない3つ

区分の表に入りきらない、原則として外すものが3つあります。

1つめは、判断そのもの。 金額を決める、採用を決める、契約を結ぶ、謝るかどうかを決める。これらは理由を説明できる人が決める必要があります。あとから「なぜこの金額か」と聞かれたとき、答えられなければなりません。

2つめは、責任が伴うもの。 法令の解釈、労務の扱い、税務の判断。間違ったときに会社が責任を負うものは、専門家に確認します。AIの回答は、専門家に聞くときの下準備としては役に立ちます。

3つめは、一次情報の作成。 自社の実績、お客さまの声、現場で起きたこと。これらは見てきた人しか書けません。 作ると、事実でないものが混ざります。この線引きはAIでサイトを作るときの注意点でも触れています。

同じ業務でも、会社によって答えが変わる

最初に書いたとおり、業務名だけでは決まりません。同じ業務でも、次の条件で区分が変わります。

  • 出口がどこか|社内で止まるのか、社外に出るのか
  • 確認する人がいるか|分かる人が社内にいるかどうか
  • 元になる資料があるか|突き合わせる材料があるか
  • 間違ったときの影響|言い直せば済むか、取引に関わるか

たとえば「提案書の作成」は、社内レビューが必ず入る会社なら「任せる」ですが、担当者がそのまま持っていく会社なら「条件付き」です。他社の一覧をそのまま持ってきても合わないのは、ここが違うからです。

自社で分けるときは、実際にその業務をしている人に聞くのが早いです。管理職が想像で分けると、確認工程の有無が実態とずれます。現場の実態と合わない前提で決めたものが使われなくなる、という構図は生産管理システムが現場で使われない理由と同じです。

線は固定しない

一度引いた線は、次の2つで動きます。

1つめは、ツールの性能。 以前は使い物にならなかった作業が、半年後には十分なこともあります。「前に試して駄目だった」を理由に外したままにすると、使える範囲が広がりません。

2つめは、社内の慣れ。 使う人が増えると、間違いに気づける人も増えます。最初は「気づけない」だった分野が、使っているうちに「気づける」に移ることがあります。

半年に1回、区分を見直します。 見直すのは「条件付き」と「任せない」に入れたものだけで十分です。「任せる」に入っているものは、問題が出ていなければそのままで構いません。

見直しのときに聞くのは2つだけです。「条件付きのうち、条件を外せるようになったものはあるか」「任せないに入れたまま、手間が残っているものはどれか」。2つめに挙がったものが、次に手をつける候補になります。

社内で共有する形

分けた結果は、A4で1枚にまとめます。細かい規定は要りません。

書くのは次の3つです。

  • 任せてよい業務の一覧|具体的な作業名で。「文章作成」ではなく「社内資料のたたき台」
  • 条件付きの業務と、その条件|「送信前に誰が見るか」まで書く
  • 任せない業務|理由を一言添える

順番は、任せてよいものを先に書きます。 禁止から書き始めると、読んだ人が「使わないほうが安全」と判断します。この書き方と、ルール全体の作り方は生成AIの社内ルールにまとめています。

1枚にまとめたら、判断に迷った事例を追記していく欄を作っておきます。 最初に書いた一覧で全部は拾えません。「これはどっちか」と聞かれたものを、答えと一緒に足していくと、半年後には実際に使える一覧になります。

よくある失敗

  • 業務名だけで分ける|出口と確認工程が違えば、同じ業務名でも答えは変わります
  • 「重要な業務だから任せない」で決める|重要かどうかではなく、確かめられるかどうかで分けます
  • 条件を付けて満足する|チェックする人を決めないと、条件は機能しません
  • 確認の手間を数えない|確認が作業より重いなら、任せない選択のほうが早いです
  • 一度決めた線を変えない|ツールも社内の慣れも変わります
  • 詳しい人の基準で全員の線を引く|気づけるかどうかは人によって違います
  • 出どころを確かめずに数字を使う|もっともらしい数字ほど危ないです

まとめ

  • 分けるのは業務の名前ではなく、確かめ方
  • 軸は2つ。間違いに気づけるか、間違ったときに戻せるか
  • どちらも「はい」なら任せる。どちらも「いいえ」なら任せない
  • 気づけるが戻せないものは、送信前に人が見る工程を1つ足す
  • 気づけないが戻せるものは、確かめる方法をセットで決める
  • 確認の手間が作業より重いなら、任せない選択のほうが早い
  • 判断・責任が伴うもの・一次情報の作成は、原則として人がやる
  • 線は半年に1回見直す。ツールの性能も社内の慣れも変わる

京都市南区の株式会社HSEは、自社の制作業務にAIを組み込んで運用しています。判断は人、作業はAIという分担です。制作実績はこちらをご覧ください。

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