JOURNAL ↗

生成AIの社内ルール|決める6項目と、そのまま使えるひな形

生成AIの社内ルールを作ろうとすると、たいてい禁止事項の一覧ができあがります。あれも入力禁止、これも使用禁止。結果として誰も使わなくなり、ルールだけが残ります。

ルールの目的は、禁止することではなく、判断を早くすることです。 「この資料をAIに読ませていいか」と毎回誰かに聞かなければならない状態が、いちばん時間を食います。線引きが書いてあれば、その場で判断できます。

この記事では、決めるべき6項目と、そのまま使えるひな形をまとめます。

  • なぜルールが要るか
  • 決める6項目
  • 入れてよい情報・だめな情報
  • 公開前に見る3点
  • 禁止だけのルールが機能しない理由
  • そのまま使えるひな形
  • 作ったあとにやること
  • よくある失敗
  • まとめ

なぜルールが要るか

ルールがない状態で起きることは、だいたい次の3つです。

  • 使う人と使わない人に分かれる|詳しい人だけが使い、他の人は怖くて触らない
  • 判断が止まる|入力していいか分からず、毎回上長に確認する
  • 出てきたものがそのまま外に出る|事実確認をせずに公開し、あとで訂正する

3つめがいちばん怖いのですが、実際に多いのは1つめと2つめです。 ツールを契約したのに一部の人しか使っていない、という状態は、たいていルールが無いか、禁止ばかりで使い道が分からないことが原因です。

決める6項目

生成AIの社内ルールで決める6項目

決めること 決めないと起きること
1 入れてよい情報・だめな情報 毎回判断が止まる。または何でも入れてしまう
2 使ってよい用途 使い道が分からず、使われないまま終わる
3 出てきたものの扱い 下書きのまま外に出る
4 公開前のチェック 誤りや権利の問題に気づかない
5 誰が判断するか 迷ったときに止まる
6 ツールの設定と契約 入力内容が学習に使われる設定のまま使う

6項目すべてを細かく書く必要はありません。A4で1〜2枚に収まる分量にしておかないと、読まれません。

入れてよい情報・だめな情報

ここがルールの中心です。「機密情報は入力しない」とだけ書いても機能しません。 何が機密かの判断が人によって違うからです。具体的に並べます。

入れてよい 判断して入れる 入れない
公開済みの自社情報 社内資料(固有名詞を伏せる) 顧客から預かったデータ
一般的な業務の相談 未公開の企画(契約を確認) 個人情報(氏名・連絡先・経歴)
自分で書いた文章の推敲 社内の数字(丸める) ID・パスワード・APIキー
公開情報の要約 取引先名を含む相談(伏せる) 健康・家族などの機微情報
画像の下書き・案出し 自社で権利を持つ画像 他社に権利がある素材

迷ったら「これが社外に出たら困るか」で判断すると書いておくと、表に無いケースにも対応できます。

ツール側の設定も合わせて決めます。法人向けのプランでは入力内容を学習に使わない設定にできることが多いので、どのプランを、どの設定で使うかまでルールに書きます。無料版と法人版が混在している状態がいちばん危険です。

公開前に見る3点

AIで作ったものを公開する前に見る3点

AIが出したものをそのまま外に出さない。これは用途を問わず共通です。見るのは3点だけで足ります。

1. 事実が合っているか

数字、固有名詞、日付、法令や制度の名前。AIはもっともらしい誤りを出します。 特に、実在しない制度名や、古い情報をそのまま書くことがあります。

出典が確認できないものは載せない、と決めておくのが確実です。

2. 権利に問題がないか

画像の場合は、特定の作風や既存のキャラクターに寄りすぎていないか。文章の場合は、特定の記事の言い回しをそのまま写していないか。

ロゴ、商品名、人の顔が入るものは特に注意します。

3. 表記が自社のルールに合っているか

社名の表記、サービス名、敬体と常体、数字の全角半角。AIは一般的な表記で書くので、自社の決まりとずれます。

表記のルールをテキストファイルにまとめて、毎回AIに渡すと、この手直しがかなり減ります。

この3点は、サイトを作るときも同じです。AIでサイトを作るときの注意点に、人が決める工程とAIに任せる工程の分け方をまとめています。

禁止だけのルールが機能しない理由

禁止事項だけのルールには、2つの問題があります。

  • 使ってよい範囲が分からない|書いていないことは全部ダメに見えるので、安全側に倒して使わなくなります
  • 守られているか分からない|使い道が示されていないルールは、見えないところで破られます

「使ってよい用途」を先に書いてください。 議事録の要約、資料のたたき台、バナーの案出し、記事の構成案。具体的に並んでいると、そこから使い始められます。

禁止は、その後ろに短く書けば足ります。順番を逆にするだけで、同じ内容でも使われ方が変わります。

そのまま使えるひな形

以下をコピーして、自社の内容に書き換えて使ってください。すべて埋まらなくても構いません。

項目 書く内容 記入例
1. 対象 誰が対象のルールか 全社員・業務委託を含む
2. 使うツール 名称とプラン、申請の要否 法人契約の◯◯のみ。個人アカウントでの業務利用は不可
3. 使ってよい用途 具体的に並べる 議事録の要約、資料のたたき台、バナー案、記事の構成案、翻訳の下書き
4. 入れてよい情報 3段階で書く 公開情報は可。社内資料は固有名詞を伏せて可。顧客データ・個人情報・ID類は不可
5. 出てきたものの扱い 誰が確認してから出すか そのまま公開しない。作成者が事実・権利・表記を確認し、◯◯が最終確認
6. 公開前チェック 見る項目 事実(数字・固有名詞・制度名)/権利(画像・引用)/表記(社名・敬体)
7. 判断に迷ったとき 誰に聞くか ◯◯に相談。回答が出るまで公開しない
8. 記録 残すもの 外部公開物はAI利用の有無を記録する
9. 見直し 頻度 半年に1回。ツールの仕様変更があればその都度

作ったあとにやること

  • 実際に使ってもらい、詰まった場所を聞く|使われない原因は、だいたいルールではなく「何に使えるか分からない」こと
  • 用途の例を足していく|うまくいった使い方を、3の一覧に追記する
  • ツールの仕様変更を見る|学習に使うかどうかの設定は変わることがあります
  • 半年に1回見直す|できることが変わるので、禁止のままにしておく必要がなくなる項目が出ます

いちばん効くのは、社内で実際に使った例を共有することです。 ルールを配るより、「この資料、AIでここまで作った」を見せたほうが使われるようになります。

そもそもまだ使う業務が決まっていない段階であれば、ルールより先に1つ目を決めるほうが早いです。業務の棚卸しから最初の1つを選ぶ手順は中小企業のAI導入は何から始めるかにまとめています。

よくある失敗

  • 禁止事項から書き始める|読んだ人が「使わないほうが安全」と判断します
  • 「機密情報は入力しない」で終わる|何が機密かの判断が人によって違います
  • 無料版と法人版が混在する|設定が揃わず、ルールが意味をなしません
  • チェックを誰がやるか決めない|全員が「誰かが見ているはず」と思って公開されます
  • 作って配って終わる|使い方の例が増えていかないと、ルールは死にます
  • 一度作ったら変えない|ツールの仕様は変わります

まとめ

  • ルールの目的は禁止ではなく、判断を早くすること
  • 決めるのは6項目。A4で1〜2枚に収める
  • 入れてよい情報は「可/伏せれば可/不可」の3段階で具体的に並べる
  • ツールのプランと設定まで書く。無料版と法人版の混在が一番危ない
  • 公開前に見るのは、事実・権利・表記の3点だけでよい
  • 「使ってよい用途」を先に書く。禁止はその後ろに短く
  • 作ったあとは、うまくいった使い方を足していく。配って終わりにしない

京都市南区の株式会社HSEは、自社の制作業務にAIを組み込んで運用しています。判断は人、作業はAIという分担です。制作実績はこちらをご覧ください。

社内での使い方の整理やルール作りはAIの相談窓口でお受けしています。初回のご相談は無料です。何から手をつけるかの整理だけでも構いません。お問い合わせからご連絡ください。

← お知らせ・ブログ一覧へ