定額制(サブスク)デザインサービスとは|都度外注・採用との違いと選び方

バナーや説明資料、サイトの一部修正。ひとつひとつは小さいけれど、毎月それなりの数が発生する。かといって、デザイナーを一人雇うほどの量ではない。
この状態の会社が増えています。都度見積もりを取るのは手間がかかり、採用はハードルが高い。その間を埋める選択肢として出てきたのが、定額制(サブスク)のデザインサービスです。
この記事では、定額制が実際にはどういう仕組みなのか、都度外注や採用と何が違うのか、そして自社に向いているかどうかをどう判断すればいいのかを整理します。
- 定額制(サブスク)デザインサービスとは
- 都度外注・採用との違い
- 金額だけで比べると判断を間違えやすい
- 向いているケースと、向かないケース
- サブスクのデザイナーは、社員とどう違うか
- 契約前に確認しておきたいこと
- 使いこなすために社内で準備すること
定額制(サブスク)デザインサービスとは
月ごとに決まった料金を払い、その範囲でデザインの依頼を出せるサービスです。1件いくらではなく、月いくらで契約します。
呼び方はサービスによって違い、サブスク型デザイン、月額制デザイン、デザインの顧問契約などと呼ばれることもありますが、仕組みは近いものです。
「定額」でも無制限ではない
よく誤解されるところですが、定額制は「何でも好きなだけ頼める」わけではありません。多くのサービスは、次のどれかで上限を決めています。
| 上限の決め方 | 内容 | 向いている依頼 |
|---|---|---|
| 同時進行の件数 | 進行中の依頼を1〜2件までとし、終わったら次を出す | 依頼の大きさがばらつく場合 |
| 月の稼働時間 | 月◯時間までの作業に対応する | 分量が読みにくい場合 |
| 依頼の本数 | 月◯件まで、など件数で区切る | 依頼の大きさがそろっている場合 |
「同時進行1件」の形がいちばん多く見られます。依頼を順番に処理していく形なので、たくさん溜めて一気に出しても、出した分がすぐ全部返ってくるわけではありません。ここを理解しておかないと、契約してから「思ったより進まない」と感じることになります。
何を頼めるかは契約によって違う
バナーや資料などの小さい制作だけを対象にするサービスもあれば、サイトの更新、ロゴ、印刷物、動画編集まで含むところもあります。
逆に、サイトを一から作るような大きい制作は定額の対象外で、別見積もりになることが多いです。定額制は、継続的に発生する小〜中サイズの制作を回すための契約だと考えるのが実態に近いです。
都度外注・採用との違い

デザインの体制を作る方法は、大きく3つです。それぞれ、得意な状況が違います。
都度外注(案件ごとに発注する)
必要になったときだけ、制作会社やフリーランスに見積もりを取って発注する形です。
年に数回しか制作が発生しないなら、これがいちばん無駄がありません。ただし依頼のたびに、見積もり・発注・背景説明が発生します。小さい依頼が毎月続く状況では、この手続きそのものが負担になります。
また、毎回違う相手に頼むと、自社の商品や過去の経緯を毎回説明し直すことになります。仕上がりのばらつきも出ます。
採用(社内にデザイナーを置く)
社内にデザイナーがいれば、口頭ですぐ頼めて、社内の事情も共有されています。反応の速さでは他の方法にかないません。
一方で、採用には募集・選考・教育の時間がかかりますし、入社後に仕事量が安定しない期間があると、手が空いてしまいます。デザイナー一人分の仕事が常にあるかどうかが判断の分かれ目です。また、一人採用すると、その人の得意分野に制作の幅が縛られます。Webが得意な人に印刷物を頼む、といったことが起きます。
定額制(月額で継続的に依頼する)
毎月決まった額で、決まった枠を使う形です。都度外注のような毎回の見積もりがなく、採用ほどの固定費と手間もかかりません。
同じ相手が続けて担当するので、説明の量が回を追うごとに減っていきます。トーンや使う色も揃いやすくなります。これは金額には出ませんが、実務ではかなり効いてきます。
反対に、依頼が月に1件も出ない月があると、その月は払った分を使い切れません。使わなくても料金は発生します。
金額だけで比べると判断を間違えやすい
3つの方法を比べるとき、多くの会社が月額の金額だけを並べて比較します。ただ、実際にかかっている負担はそれだけではありません。
金額に出てこない負担がある
- 依頼のたびに背景や目的を説明する時間
- 見積もりを取り、社内で通し、発注する手続き
- 仕上がりが想定と違ったときの差し戻しと、そのやりとり
- 採用の場合は、募集・面接・教育にかかる時間
これらは請求書に載りませんが、担当者の時間を確実に使っています。特に説明のやり直しと手戻りは、頼む相手が毎回変わるほど増えます。
「量」ではなく「発生の仕方」で見る
定額制が合うかどうかは、制作の総量よりも、発生の仕方で決まります。
年に1回、大きい制作がある会社は、都度外注が向いています。定額で持っていても使う月がありません。
反対に、毎月バナーが数本、資料が1本、ページの修正がいくつか、というように小さい依頼が絶えず出てくる会社は、都度外注にすると発注作業だけで疲れてしまいます。この形が定額制の想定している状況です。
向いているケースと、向かないケース

向いているケース
- 毎月、小〜中サイズの制作が継続して発生している
- 制作物のトーンを揃えたい(担当が毎回変わると揃わない)
- デザイナーを採用するほどの仕事量はない
- 社内にデザイナーはいるが、手が足りていない
- 何をいつ頼むか、社内である程度決められる
最後の項目が意外と重要です。定額制は、依頼を出し続けて初めて元が取れる契約です。依頼を出す人が社内にいない場合、枠が空いたまま月が過ぎます。
向かないケース
- 制作の発生が年に数回で、月によってまったくない
- 大きい制作を1本だけ作りたい(サイトのリニューアルなど)
- 急ぎの差し込みが多く、当日中の対応が前提になっている
- 依頼内容を言葉にする担当者が社内にいない
3つ目について補足します。定額制は順番に処理していく形が多いため、当日中の対応は基本的に想定されていません。緊急対応が常態化している業務には合いません。
サイトのリニューアルのような大きい1本は、定額ではなく制作として発注したほうが、スケジュールも責任範囲もはっきりします。判断の仕方はコーポレートサイトのリニューアル|時期の見きわめ方と進め方にまとめています。
なお、定額制・都度外注・採用は、どれか1つを選ぶものではありません。仕事の性質ごとに振り分ける考え方はデザインは採用か外注かにまとめています。
サブスクのデザイナーは、社員とどう違うか
「デザイナーをサブスクで」と言われたときに、社員を雇うのと同じ感覚で考えると、あとでずれます。人として見たときの違いを整理しておきます。
| 社員のデザイナー | サブスクのデザイナー | |
|---|---|---|
| 専任か | 自社だけ | 複数社を並行して担当する |
| 指名できるか | 当然できる | 契約による。担当固定かどうかは必ず確認 |
| 事業の理解 | 働くうちに自然に溜まる | こちらが渡した情報の分だけ |
| 稼働の調整 | 繁閑に関係なく固定費 | 止める・減らすができる契約もある |
| 急な依頼 | その場で頼める | 依頼の順番待ちになる |
| 辞めるリスク | ある。引き継ぎが必要 | 会社として続くので個人の退職に左右されにくい |
| 採用の手間 | 募集・選考・教育が要る | 契約だけ |
いちばん差が出るのは「事業の理解」です。 社員は会議や雑談から前提を拾えますが、外部はそれができません。ここは渡す情報で埋めるしかないので、ブランドのルールや過去の経緯をまとめて最初に渡しておくと、出てくるものの精度が変わります。
逆に、急ぎの依頼が頻繁にある会社には向きません。「明日の朝までに」が月に何度もあるなら、社内に置いたほうが結果的に早く済みます。
社員を雇うか、都度外注か、サブスクか。これは量ではなく発生の仕方で決まります。毎月コンスタントに発生するならサブスク、年に数回まとまって出るなら都度外注、毎日即時に発生するなら採用です。
もう1つ、型だけ外注して中身は社内で差し替えるという形もあります。社内資料や告知バナーのように量が多く、やり直しのきくものは、この形が合うことがあります。進め方はバナー・社内資料をAIで内製する手順にまとめています。
契約前に確認しておきたいこと
定額制はサービスごとに中身の差が大きい契約です。次の点は、契約前に文章で確認しておくことをおすすめします。
1. 同時に進められる件数と、依頼の単位
「同時1件」なのか「月◯件」なのか。そして、どこまでを1件と数えるのか。バナー5サイズを1件とするか5件とするかで、実際に使える量はまったく変わります。
2. 対応できる範囲
Webのバナーだけなのか、印刷物やロゴ、動画も含むのか。含まないものは別料金になるので、自社でよく発生するものが範囲に入っているかを確認します。
動画を含めて依頼する場合は、指示の出し方で仕上がりが変わります。動画編集を外注するときの注意点|失敗しない指示書の作り方も参考にしてください。
3. 修正の回数と、戻しの期限
修正は何回まで含まれるのか。こちらの確認が遅れたとき、その依頼はいつまで有効なのか。ここが曖昧だと、月末に依頼が滞留します。
4. データの権利と、納品の形式
制作したデータの権利がどちらにあるのか。契約を終えたあとも使い続けられるのか。編集可能な元データをもらえるのか、書き出した画像だけなのか。
解約後に自社で手を入れられるかどうかは、後から効いてきます。元データがもらえない契約だと、少しの修正でも依頼し直すことになります。
5. 解約・停止の条件
最低契約期間があるか、月単位で止められるか。繁忙期だけ使って閑散期は止めたい、という使い方ができるかどうかも確認しておきます。
使いこなすために社内で準備すること
定額制は、契約しただけでは効果が出ません。使う側の準備で結果が変わります。
依頼を溜めておく
思いついたときに依頼を出す形だと、枠が空く月と溢れる月ができます。「次に頼みたいもの」のリストを社内で持っておき、枠が空いたら上から出していくと安定します。
窓口を1人に決める
複数の人がばらばらに依頼を出すと、優先順位が崩れます。社内で受け取ってから出す人を決めておくと、依頼の質も揃います。
ルールを最初に渡しておく
ロゴの使い方、使う色、書体、過去の制作物。最初にまとめて渡しておくと、以降の制作が揃います。毎回説明するより、一度渡すほうが早く済みます。
依頼には「目的」を書く
「バナーを作ってください」ではなく、「どこに出すのか、誰に見てほしいのか、何をしてほしいのか」を書きます。これがあるだけで、最初の提案の精度が変わり、修正の回数が減ります。
まとめ
- 定額制(サブスク)デザインサービスは、月額で決まった枠のデザイン依頼を出せる契約。無制限ではなく、同時進行の件数や稼働時間で上限が決まっている
- 都度外注は年数回の制作に、採用は常時デザイナー一人分の仕事がある場合に向く。定額制はその中間で、小さい依頼が毎月続く状況を想定している
- 金額だけで比べず、説明や手続き、手戻りにかかっている時間も含めて見る
- 契約前に、依頼の単位・対応範囲・修正回数・データの権利・解約条件を文章で確認しておく
- 依頼を溜める、窓口を決める、ルールを最初に渡す。この3つで使い勝手が変わる
自社にはどの形が合うのか判断がつかない場合は、いま毎月どんな制作がどれくらい発生しているかを1か月分書き出してみると、だいたい見えてきます。
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